知的障害を持つ父と娘の物語
7歳の知能しかない父(ショーン・ペン)は、ホームレスの女性が置き去りにした娘と一緒に暮らしている。娘が7歳の誕生日に、父の知能を超えてしまうあたりから、ソーシャルワーカーが父娘を引き離し、裁判によって親権が問われていくというストーリー。
とにかく娘のルーシー・ダイアモンド(ダコタ・ファニング) の演技が素晴らしい。そして可愛い。もちろん父親のショーン・ペンもすごい演技。以前に「フォレスト・ガンプ」を見た際に、本当にトムハンクスは知的障害なのか…と思った時と同じ印象。いや、それよりサムの方がすごいかも。
物語序盤の父娘の幸せそうなエピソードは、本当に微笑ましいし、懐かしい気持ちになる。だが、こうした最初に幸せなエピソードが、幸せたっぷりに描かれている映画ほど物語は悲惨な結末に向かっていくのが映画の定説。
本作でも、父親としての能力を問われたサムが、裁判で保護者能力を問われる。そこにキレモノの女弁護士(ミシェル・ファイファー)が登場するのだが、これもうまく描かれている。当初は仕事一筋の、ちょっと冷徹な弁護士を演じているが、これは後に「いいひと」になることを予想している。それが映画の定説(笑)。中盤からは、彼女が抱えている家族の問題や、法廷での一流な仕事っぷりなどでどんどん引き込まれている。
誰もが「幸せ」になるために
その裁判だが、父の能力を疑う黒人検事が、悪者っぽく描かれている。でも、よく考えるとこの検事もまっとうなことを言っていて、大きな目で見た「幸せ」を見据えていたんじゃないかと思う。決して意地悪で言っているんじゃなく、サムがルーシーに注いでいる愛情を理解したうえで検事としての正義を果たそうとしていたんじゃないかと思う。
娘を連れての脱走や、夜中に抜け出していく父に会いに行く娘など、素敵なエピソードがいっぱいで、ちょっとほろっとする映画なのである(泣ける…まではいかないが)。特にセブンイレブンの前を、何往復もする映像カットは微笑ましく、ほろっとする。
そして、ほろっとする場面の連続で気がつくと涙が溢れて見えなくなるような、そんな素晴らしい映画。
ビートルズ愛に溢れた映画
全編を通してビートルズがキーワードになっている。なにしろ娘の名前が「ルーシー・ダイヤモンド」なのだから。サムの部屋のジョンレノンのポスターや子供のパーティで初期のビートルズの格好をする父、そしてセリフの中にもビートルズでいっぱい。特に、ルーシーが「愛こそはすべてよ」と言い切るのは、この映画を物語っている。
Wikiペディアによると、この映画でビートルズが取り上げられているのは、取材先の障害者施設の利用者の多くがビートルズが好きであったためだそうだ。しかし、ビートルズの楽曲を使うには膨大な予算が生じてしまうため、多くの豪華アーティストによるビートルズのカバーを行ったが、逆にそれが話題となったという。確かに音楽はすごく素敵だ。そして映像も下の写真は、アビーロードをリスペクトしているに違いない。
物語は、すべての登場人物に幸せな結末で終わる。それでいい。 そして最後はみんな「いいひと」の顔で幸せそうだ。最初からサムを応援している近所のオッサンたちはもちろん。
そうそう、ラストのサッカーの試合の前に、父とやりとりをするルーシーは、猛烈にかわいい。
- 監督:ジェシー・ネルソン
- 脚本:クリスティン・ジョンソン/ジェシー・ネルソン
- 製作総指揮:マイケル・デ・ルカ
- 出演者:ショーン・ペン/ミシェル・ファイファー/ダコタ・ファニング
- 日本公開日:2002年6月8日
- Wikiペディアで見る
映画レビューのもくじを見る(他の記事も読んでね)