浪商のヤマモトじゃ!大阪総番長編

2003年公開の山本集の自伝映画

最初は「浪商のヤマモト」と聞いても全くピンとこなかった。とりあえず「浪商」というキーワードに惹かれて観た。現在は大阪府泉南郡にある「大阪体育大学浪商高等学校」も、僕が高校時代には浪商は茨木市にあった。当時の阪急京都線には、私立の男子校が5つあり、女子校は3つで、すべてが落ちこぼればかりが通う高校だった。ちなみに僕が通っていた大阪学院大学高校もそのなかのひとつだった(「高校は男子校でした」参照)。

そのなかでも、茨木の浪商と、上新庄駅にあった北陽高校は、当時関西の不良高校のベスト10にランクインしていた(笑)。むろん、ケンカだけではなく、浪商と北陽はスポーツとしても強豪で、特に野球では「大阪私学7強」と呼ばれている学校の上位にランクインしている。

この映画の舞台は昭和31年なので、僕が生まれる前。浪商高校も茨木市ではなく、東淀川区(阪急の駅では淡路駅)にあった頃の映画。その当時の淡路駅周辺は、小さな繁華街で、浪商と北陽が隣同士に近い距離にあったことで、きっとデンジャラスな街だったのだろう。

この「浪商のヤマモトじゃ!」シリーズは、喧嘩野球編、大阪総番長編、鬼監督のヤマモトじゃ!(1・2)の4作品があり、そのいずれも山本集(やまもと あつむ)の自伝が原作になっている。映画を観はじめてから、山本集が誰なのかピンとこなかったのだけど、浪商野球部卒業後、寿司屋と石屋経営を経て、智辯学園の野球監督そして、ヤクザ、さらに最終的には画家として波乱万丈な人生を送ったおっさんで、検索して「あ、このひとか!」とわかった。

ちなみに山本集公式ホームページは、めちゃくちゃ面白い。すでに2011年に故人になっておられるが、尊敬に値するおっさんである。公式ホームページのコンテンツ「西の空からコケコッコー」はすごく読み応えがあるコンテンツで、オススメです。

昭和30年代のシゴキ野球がうまく表現されてます

その山本集の人生で、浪商野球部というのが重要な位置を占めていて、頭が悪くて、乱暴者の兄ちゃんが、この先の人生で成功するには「甲子園に出てプロ野球選手になる」という、当時の分かりやすい意識がうまく表現されている。荒んだ男子校の様子や、今では考えられないシゴキ野球。要するに頭の悪い乱暴者の兄ちゃんが成功するには、プロ野球選手として身を建てるか、喧嘩を極めて極道もんになる…という二択しかない。

そして、山本集が野球部時代に知り合った、張本勲はプロ野球選手になり、山本集はヤクザの組長になった。その彼らの青春時代は、痛いほどナマナマしい。

映画に中盤から登場する広島からの転校生、張本勲。貧困生活から這い上がるには、野球しかないと決心し、他人の5倍の素振りを毎日やる。張本一家も勲の野球選手に希望を託し、爪に火を灯し仕送りをする。それに応える張本勲。育ち盛りだが、食事も満足にできず、晩飯は白米だけのドカベン。

その姿に感動したアツムが、彼を下宿から引き上げさせ自宅に無料で住まわせて、飯の世話もする。そのあたりが、とても自然に描かれていて、現代ではなかなか見ることのできない青春を感じます。

昭和の街並みと青春

映画としては、かなりの低予算だったのか、セットや小道具に金がかかっていないのが残念だが、それなりに「昭和の良き時代」を再現していると思う。

この当時の浪商は東淀川区(阪急淡路)にあったらしいが、何度も出てくる淀川の堤防が懐かしい。うちの高校(大阪学院大学高校)も、淀川沿いにあって、体育の授業では、マラソンでずっとここを走らされたことを思い出しますわ。

男子校独特の荒廃した雰囲気や、高校生の恋愛事情などは観ていて切なくなるのがよい。とりわけ、ヤマモトアツムに恋をするセーラ服の夏川純や、ラーメン屋のお姉ちゃん(鈴木紗理奈)。そして女同士の小競り合い(笑)。

結局、甲子園には行けなかったふたり

結局、甲子園を目指して野球部に入った二人だが、事実と同じく甲子園には行くことができなかった。それ以前に、アツムは半年間の野球部の対外活動停止で、グレてしまったのか、学校内外での喧嘩によって青春を燃焼させていく。

野球部から離れたアツムだが、ハリモトは相変わらず気持ちよく接してくる。そして寡黙に素振りを繰り返し、プロ野球選手を目指していく。

だが、山本集公式ホームページの「西の空からコケコッコー」にもあるように、結局、張本勲は甲子園には出場できなかった。むろんヤマモトアツムも同じく。というよりも、アツムはすでに野球部を退部していたのだ。

思えば高校生ってのは大人の入り口

これも、実在の人物らしいが浪商の中島春雄監督も、この映画でいい味を出している、演じているのは実力派の國村隼。

喧嘩に明け暮れて補導され、引き取りにくるのが、このナカジマ監督。いわゆるシゴキの暴力監督というイメージだが、言葉数少なくアツムの面倒を見ているのがよいです。

ラストは、東映フライヤーズの入団が決まった張本勲を、見送りに行く駅でのシーン。そこへ、ハリモトに恨みを持つ大学生のチンピラが集団でやってくる。

そのチンピラに「勘弁したってくれ」と土下座するアツム。もちろんチンピラは、そんな土下座で許すわけなく、やる気満々で、駅で大乱闘になる。

ハリモトはみんなに抑えられて喧嘩に参加せず、悔し涙。ラストは大乱闘のなか、嬉しそうに振り返るアツムのストップモーションで映画は終わります。

山本集のサイトを読むと、実際にはこんなシーンはなかったらしい。…がしかし、このラストシーンが、学校を卒業し残りの人生に足を踏み出す高校生をうまく描いていると思う。

高校生というのは、自分の人生を決める最初の岐路だってことを改めて思い直した映画。

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