空気人形

ネタバレですみません

えっと、最初にあらすじを書いてしまいます。ネタバレありありです。すみません。

空気人形ってなんのことだろう…と少しだけ考えたのですが、要するに「ダッチワイフ(wikiを読む)」とか「ラブドール」と言われている女性の形をした人形で、男性はこれでオナニーをします。制欲処理のためのセックスの代替手段。この映画では、昔ながらの空気を入れて膨らませるタイプの人形。だから空気人形。

ストーリーは極めてシンプルなのですが、うまく書く自信がないのでWikiを引用します。

あらすじ

秀雄はラブドールに「のぞみ」と名づけて話しかけたり、抱いたりして暮している。人形がある日、瞬きをしてゆっくりと立ち上がり、軒先の雫(しずく)に触れて「キレイ」と呟く。いろいろ試着して結局、メイド服で外出。ビデオ屋の店員・純一に惹かれ、アルバイトを始める。秀雄にキスされながら「私は心を持ってしまいました」とつぶやく。

純一に自分と似た空虚を感じ取る。店長の鮫洲から「好きな男はいる?」と尋ねられて否定し、「心を持ったのでウソをつきました」という。秀雄から「お前は年取らないでいいな」といわれるが、「私は性欲処理の代用品」「型遅れの安物」と思う。死を予感する元国語教師の敬一に「私は空っぽ」というと「君だけではない」といわれ、吉野弘の詩「生命は」を教えられる。還らぬ母の帰りを待つ女の子と父親、執拗に若さを求める佳子、やたら覗きたがる浪人生など街には虚しさを感じている人が多いことを知る。

ある日、店で釘を引っかけて穴が開く。純一は驚きながらも、必死に息をヘソから吹き込んで救う。誰もいない店内で2人は抱き合う。幸福を覚えるが、帰宅すれば秀雄との生活が待っている。純一の部屋で前の彼女の写真を見て嫉妬する。仕事で「お前の代わりなんかいくらでもいる」といわれた後、ビデオ屋に寄った秀雄が恋人だということを純一には黙ってやると脅されて店長と寝る。自分の運命にジレンマを覚えるが、秀雄が新しい人形を手に入れ、ケーキで祝っているのに激怒。心を持ったら面倒くさいといわれて家出。敬一は代用教員で「ずっと空っぽの代用品」で淋しかったか忘れたという。生みの親である人形師の園田の家で同じ人形たちが帰った時にそれぞれ顔が違ってくると聞き、心を持ったことの意味を理解する。園田に「生んでくれてありがとう」と告げる。何でもする、というと純一は空気を抜きたいといって抜く。今度は人形が純一のヘソに穴を開け、吹き込もうとする。

wikiぺディアより

主人公は「のぞみ」と名付けられたダッチワイフ。持ち主は不満だらけの仕事をしている秀雄(板尾創路)。この板尾の演技がいい。というか演技なのか素なのかわからないけど、お笑いの世界から出てきた役者としては、彼は群を抜いて素晴らしい。

飲食店に勤め、年下の若造から文句を言われ、のぞみが待っている自宅に帰ると、ダッチワイフを椅子に座らせて、1日の愚痴をこぼす。そして寝る前に、のぞみを抱く。

どこにでもいそうなオッサンの生活を、こんなにも赤裸々に描くのは鋭い。なんだか観ていて恥辱を感じてしまう男性は少ないくないのではないだろうか。

心を持ってしまったダッチワイフ

翌朝、のぞみは自分の意思で目が覚める。目が覚めると「心を持っていた」のである。彼女は自分の意思で洋服を選び、外出する。

初めての外界の体験。このあたりののぞみの演技は素晴らしい。見た目は成人の女性なのに、外界と触れ合う姿は、まるで1歳児のようだ。

初めての街を探検し、のぞみはレンタルビデオ店を訪れる。そこで出会う店員と恋に落ち、店長に弱みを握られてトイレでセックスをして…、のぞみは外界の人々と彼女なりにコミュニケーションをとっていく。

このあたりで、なんかすごい映画だなあ…と思って、思わずサーチしてしまった。それもそのはず、監督は「誰も知らない」の是枝裕和なのです。そしてのぞみを演じている女性は「リンダ リンダ リンダ」でボーカルをやっていた、韓国人のソンさん。ペ・ドゥナだったのです。

改めてペ・ドゥナのすごさを実感しました。というか「リンダ リンダ リンダ」で演じた韓国から来た交換留学生と、今回のダッチワイフ。いずれも共通しているのはエイリアンであること。上手なキャスティングだと思いました。

豪華なバイプレーヤー

この映画…のぞみの視点で、多くの人々が描かれています。そこに登場する人々はイライラしていたり、少し悲しい気持ちだったりします。そのあたりの描き方が是枝裕和はうまい。もちろん脚本も是枝氏です。

その脇を固める役者さんも素晴らしい。常に寂しい気持ちの秀雄は観ているだけで切ない。レンタルビデオ店の店員の純一はイケメンなのに同じく切ない。若い派遣社員に年齢的な壁を感じている企業の受付嬢。日常に不満だらけのビデオ店の店長、ヤクザ映画が好きな警察官、かつて代用教員だった老人、痴呆症が進行しているおばあさん。

それを演じているのが、余貴美子、寺島進、富司純子だったりするのです。極め付けが、のぞみを作ったダッチワイフ工場の経営者(?)のような役所のオダギリ・ジョー。なんかいい感じに泣けます。

自分が作ってきたダッチワイフの哀しさを知っている。まるで鉄腕アトムの天満博士を100倍やさしくしたようで、これもナイスキャスティング。

もうひとつのドラマの柱は、レンタルビデオ店の店員、純一とのぞみの恋愛関係。お店で空気が抜けてしまったのぞみに純一が空気を入れるシーンは、妙にセクシー(笑)。のぞみが海が観たことがないので、海を観に行ったりとか、なかなか青春しています。

ラストにのぞみが笑顔で「私はなんでもしてあげる」と言うアプローチに、彼は空気を抜いて、入れたいと言います。そして彼に「何がしてほしい?」と問うと「僕も空気を抜いてほしい」と純一は言うのです。

ダッチワイフは死んだら燃えないゴミ。人間は燃えるゴミ。というエンディング。素晴らしい映画でした。

古びたアパートで、持ち主である秀雄と暮らす空気人形――空っぽな、誰かの「代用品」。ある朝、本来持ってはいけない「心」を持ってしまう。 秀雄が仕事に出かけると、洋服を着て靴を履いて、街へと歩き出す。 初めて見る外の世界で、いろいろな人間とすれ違い、つながっていく空気人形。ある日、レンタルビデオ店で働く純一と出会い、その店でアルバイトをすることに。 密かに純一に想いを寄せる空気人形だったが、 彼の心の中にどこか自分と同じ空虚感を感じてしまう――。(C)2009 業田良家,小学館,『空気人形』製作委員会

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