空母いぶき

かわぐちかいじ原作の映画版

『沈黙の艦隊』『ジパング』などの軍事漫画を得意とする、かわぐちかいじの漫画『空母いぶき』が原作。漫画では明確に敵は中華人民共和国となっているが、映画版では、諸般の事情からか、相手国を中国から架空の国家共同体「東亜連邦」(とうあれんぽう)に変更されている。がしかし、誰が見ても敵国は中華人民共和国だ。

そして、物語は東亜連邦が尖閣諸島の南小島に上陸し、「この島は固有の領土である」と主張し、日本の民間漁船を拿捕。その救援に向かうため、空母いぶきを中心とした6隻の第五護衛隊群が東シナ海に向かうとことから物語が始まる。

自衛隊、内閣、報道、民間の動きが同時に描かれる

第五護衛隊群は、総司令(藤竜也)が負傷で倒れ、「いぶき」艦長( 西島秀俊)が艦隊の指揮を執り、副長(佐々木蔵之介)と時として対立する。「力には力をもって思い知らせる」という信念の艦長と、「自衛官に必要なのは何があっても戦争を阻止する覚悟」といった信念の副長。

この国が敵国から攻撃されたらどうなるのか? という僕たち国民ならば誰もが一度は考えたことがある大きなテーマ。「専守防衛」を信条とする自衛隊は軍隊ではなく、あくまでも自衛のための部隊だ。そこに従事する自衛官は、もちろんその理念の上に行動している。

相手からの攻撃に対して、新兵器で対抗すれば敵を殲滅できると提案する部下に、潜水艦司令官(髙嶋政宏)は、そうなれば相手乗組員300人が死亡する。そうなってしまうと、もう戦争だ。と部下をいさめる

こうした、「専守防衛」の上に訓練を積んでいる自衛官は、本当に尊敬に値する。もちろん映画の中の話だが、この信念がなければ日本は、他国と開戦していたかもしれない。

そして「いぶき」には取材として2名のジャーナリストが(本田翼と小倉久寛)が乗り込んでおり、女性記者は衛星電話を所持し(これは協定違反)、艦内の様子を編集部(斉藤由貴)に報告している。

もちろん官邸も大変なことになっている。総理大臣(佐藤浩市)をはじめ、外務大臣、官房長官、防衛大臣が、相手国との連絡、関係国との交渉、そして国連との調整を行う。このあたりも極めてリアル。

そして民間の様子も、クリスマスイブを前日に控えて、サンタの長靴にお菓子を詰めるコンビニ店長(中井貴一)。うだつのあがらない親父だが、仕事は丁寧で、ひとつひとつのクリスマスプレゼントに、自筆でメッセージを書き込んだりしている。

日本の領土で戦闘機が撃墜される

そして、問題となっている尖閣諸島上空に飛んだ自衛隊のファントムが、敵国のミグに撃墜される。

同時に、敵国の艦隊からいぶきに向けて魚雷が発射される。多くの魚雷は撃沈したが、残り一発が間に合わず、護衛艦「はつゆき」が、自ら標的となり被弾する。この魚雷攻撃で、護衛艦は大きく破損、そして死亡者まで出してしまう。

それでも、自衛隊は専守防衛。日本から攻撃を仕掛けることはできない。

いぶきを守って炎上するはつゆき。その様子を甲板から眺め、ビデオ撮影をする女性記者。

「はつゆきが燃えています…」と炎上する護衛艦を前に、それ以上の言葉を伝えられない女性記者。そして、その様子は衛星電話で東京に送られ、ネットニュースで日本中に、あっという間に拡散されていく。

戦闘の様子がネットでリークされる

このニュースのせいで、ついに官邸が記者会見を開く。「そんなことは後回しにして、部隊を増援しなくては、この「いくさ」は負けてしまうぞ」と息巻く外務大臣に「この国は、戦争放棄だけは守ってきた。そんな「いくさ」などという言葉は軽々しく使ってもらっては困る」と諌める。

そうなのだ、「いくさ」であれば簡単なのだ。全力で攻撃すればよい。しかし、それでは、戦後ずっと平和を維持してきた日本という国が壊れてしまう。専守防衛という手段しかないにも関わらず、苛立つことなく闘っている自衛官に総理は敬意を表している。これも大きなテーマだ。

そして、記者会見では、相変わらずスットコドッコイな質問ばかりする左翼系メディア。きっとリアルでこんな状況になったら、パヨクの政党のみなさんも同じことをやっているんでしょうね。タワシ頭の台湾の女性議員がヒステリックに騒いでいるのが見えてきそうです。

そして、ネットでは多くの無責任な書き込みが垂れ流され、「戦争が始まった」と大勢の市民がコンビニで食料を買い占める。それが平和ボケした私たちの姿なのです。きっと僕も同じでしょうけど。

そんな平和ボケの日本でも。自衛隊は敵国と戦っている。敵の戦艦二隻が攻撃を仕掛けるところを、射程距離ぎりぎりまで近づき、主砲を使って敵を無力化する護衛艦「いそかぜ」。専守防衛とはいえ、戦闘は行う。相手に死傷者を出さずに敵を無力化する。

いよいよ敵国の戦闘機が大量に襲ってくる。それに立ち向かう自衛隊戦闘機。

戦闘機のドッグファイトは迫力満点

日本の航空自衛隊のパイロットの腕前は、かなり高い…と合同演習した米国の戦闘機乗りが言っていた…ということをYouTubeの動画で見たことがあります(まあ、もっともそれって自衛隊サイコー信者のひとなので真偽のほどはわからないのですが)

それでも、ここからの戦闘シーンはかなり迫力があります。日本のパイロットには撃墜命令が出ています(戦闘機が撃墜されてもパイロットが脱出できるから…という前提なのでしょうね)。

戦闘中も、オペレーションしながメシをかっ込む自衛隊員もかっこいいです。

ここからはネタバレ含みます

さてここからはネタバレですので、これから観ようと思っているひとはページを移動してください。

先の戦闘で日本は戦闘機が一機撃墜され、パイロットを救出。敵国は全機撃墜されてしまっている。しかし、脱出したパイロットも同じように救出して、いぶきに運び込まれる。その時、生き残った敵のパイロットが自衛隊の隙を見て、拳銃を奪取して、生き残った自衛隊のパイロットを射殺してしまう。

銃を取り上げ、敵兵に銃を向ける自衛隊を艦長が「彼はもう武器を持っていない」と阻止する。さらに彼に優しい言葉をかけて、暖かい飲み物を与えるように指示する。

この様子が、女性記者のビデオカメラに収められ、またしても全世界に向けて翻訳付きで配信される。リアルな戦時下での自衛隊の行動が、世界中に共感を広めていく…。

…という、まあ映画ならではのフィクションなんですが、けっこうストンと受け入れられます。

最後の最後は、国連の潜水艦五隻が間に入って戦闘を終わらせる。もちろん、外務省の活躍のおかげである。

こんな風に丸く収まるとは思えないが、この映画を通じて日本が外国から攻撃されたら、どうなるのかを考えさせられる映画でした。

そして、それはこの映画が公開された2019年から、たった2年後の2021年、日本と中国は尖閣諸島において、とても緊迫していますよね。この夏のオリンピックが終わった頃、なにか有事が起こらなければよいですが…と祈るばかりです。


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