サウンド・オン・サウンド/レッド・ノイズ(7/31)

ビ・バップ・デラックスを覚えていますか

正確なバンド名は「ビル・ネルソン’s レッド・ノイズ」である。当初バンマスのビル・ネルソンは自分の名前を付けないことを希望したらしいが、レコード会社の方針でこうなったらしい。というのも、ビル・ネルソンはこのバンドを組むまでに「ビ・バップ・デラックス」というバンドでそこそこ英国で知名度があったからである。

そのビ・バップ・デラックスのデビューアルバムは1974年。ポスト・グラム的評価を受けるが、ビルは「デヴィッド・ボウイらと比較される事を快く思わなかった」と後に述べている(Wikiぺディアより)。

僕が大学になって70年代のレコードを買い漁っていた頃、ビ・バップ・デラックスは「アウト・オブ・ガンチュー」だった。まずビル・ネルソンが使っていたギターが、ギブソンのES345だったからである。この時代にギブソンの335だの345だのを使っているギタリストにろくなやつはいない(笑)…というのは言い過ぎだが、このセミアコはジャズとかフュージョンのギタリストの御用達で、テクニックのあるギタリストがこれ見よがしに使うと言う、僕の思い込みがある。

実際にビ・バップ・デラックスの楽曲は小洒落ていて、それなりにテクニックがある。きっとデヴィッド・ボウイらのグラムロックと比べられるのを嫌がったのは、彼ら(グラム)の音楽を「幼稚な音楽」だと思ったのだろう。そういうテクニックでしか見れないあたりが、ビ・バップ時代のビル・ネルソンの限界だと思う。そういう意味で僕にとってのビ・バップ・デラックスは「餃子」のようなバンドだった。すなわち「うまいけど臭い」。しかも顔も地味でロックスターって感じじゃないしさ(笑)。

ちなみに彼のギブソン345は、サックス奏者の父親がビルの才能を見抜いて、買い与えたものらしい。故に345はビルのトレードマークであり、上のビ・バッブの初期の3枚のアルバムは、何かしらギターがモチーフになっている。

しかし、テクニック至上主義のバンドに限界を感じたのか、4枚目のアルバムから、未来志向というか彼が好きだったSF(センス・オブ・ワンダー的な)や、映画がモチーフになってくる。最後のライブアルバムのジャケットなどは、メトロポリスのマリアが登場している。

このあたりで、ビルは自分の音楽をテクニックだけに頼るのをやめようと決心したのだろう。故に「ビ・バップ・デラックス」を解散させて、新しいプロジェクトとして「レッド・ノイズ」をスタートさせるのである。

僕が大学時代に目指したレッド・ノイズ

そしてスタートしたレッドノイズ「サウンド・オン・サウンド(1979年)」は、パンクが終わった後の世界に、ビ・バップの反省を踏まえて、未来やSFのテイストを大きく取り入れ、さらに大々的にシンセサイザーを取り入れて制作された、ポップなアルバムだ。その意識は十文字美信のパナソニックの広告に使われた世界的に有名なアルバムジャケットにも現れている。

当時、大学でバンドを組んでいた僕たちは、ウルトラボックス、ディーボ、カーズなどと並んで、レッド・ノイズの音作りを目指した時期があった。特に大学卒業間際で結成した「プラネットシティ」では、ライブで、このアルバムから「Art/Empire/Industry」という曲をカバーで演奏したことさえある。

スパークスのブログでも書いたが、1979年頃は「今までになかった新しいアプローチ」をすれば、必ず評価された時代。そして本当に、このアルバムはA面の1曲目からB面のラストまで、ダメな曲がひとつもない素晴らしいアルバム。

このアルバム完成後は、ビルはテクニシャン揃いのメンバーを引き連れて、レコードと寸分変わらない完璧な演奏で、アメリカンツアーを行う。しかし、ツアーはもちろんアルバムもあまり売れずに、そのままレッド・ノイズは解体されてしまう。

それは何が原因なんだろう。これだけピカピカに光り輝いているレコードなのに、ライブになると地味だったのだろうか。演奏が上手すぎたのだろうか。それともギブソンのセミアコがみんな気に入らなかったのだろうか(笑)。ともあれ残念。

そんなわけで、もしレッド・ノイズをお聞きになっていなければ、ここから聞いてみてくださいね↓


でも、このアルバムは僕にとって「ビル・ネルソン」というギタリストのランクを一気にベスト10まで引き上げた記念すべきもの。ビルも、きっとこのアルバムとライブの失敗で絶望したのか、派手な動きはしないで、コツコツと小品が集まった多重録音系、かつテクノ、かつアンビエントな作品を、地味ですがリリースしいく。

それがイーノの「アナザー・グリーン・ワールド」的な展開でとてもよい。日本のYMO系のアーティストとも交流があり、特に高橋幸宏のアルバムおよび、ライブのツアーメンバーにも参加している。ついでにビルの奥さんの、東郷恵美子さんは、元高橋幸宏夫人だったりする(笑)。

そのビルのライブですが、小さなステージで楽しくやっているのをYouTubeで見つけた。ビ・バップの頃の曲ですが、昔と変わらないテクニック。しかも、今見ると(と言っても2011年のものですが)、あまりテクニックが鼻につかない。きっとおじいさんになって、音楽を楽しんでおられるからなんだろうな。


このブログは、ランキングに登録しています。下のボタンをクリックすると、モリカワブログに一票入り、ランキングが上がります。皆さまのご協力を賜りたく、ぜひクリック(タップ)してください。(クリックするとブログランキングの結果ページに移動します)
投票ボタン