エンゼルアワー・デモテープ制作

初のレコーディングをする

さて、バンド結成から最初のライブを経験し、その評判もよかった僕たち(というよりもバンマスの谷くん)は、機嫌をよくしたものの、バンドとして次のステップ進むにはどうしたらいいのか…と悩んでいたのかどうかは知りませんが、大阪芸大の中に「音楽工学学科」というのがあり、そこに凄い人がいる。大学の学生マンション(いわゆる学生寮)に自分のスタジオを持っている。そして、彼が気にいったバンドならば、そこでレコーディングできる…というのです。

まあ「レコーディング」というのは大げさですが(だってレコードを作るわけじゃないので)、高品質なデモテープを作れるというわけです。さっそくツテやらコネやらを使って、彼のスタジオでデモテープを作ることになりました。彼の名前は「うーさん」と言います。

うーさんのスタジオは学生寮の一室なのですが、部屋一面に楽器やら音響系の機材やら、色々な部品やらが散乱していて、とても人間が生活できる環境ではないのです。さらに彼はそれを把握してか、隣の部屋も借りて、さらにスタジオ音響機材のために壁に穴を開けて(もちろん非合法)、隣の部屋を鉄板エコーで使えるようにするという徹底ぶり。

そしてほとんどの機材が、ハンダゴテを片手に作った彼の自作。しかもその完成度がすごい。よい音を作るためには手段を選ばずに、徹底して作り込むエンジニア魂。

シンセベースを頑張っているおれ(中央)

そこでスタートしたレコーディングというかデモテープ作りは。今でも僕の人生のなかで「すごい思い出ベスト10」に入るくらいの経験。これまで練習してきた楽曲を、ひとつひとつ丁寧に録音(このデモテープ制作にはティアックの4トラックレコーダを使用)

ひとつひとつの音を丁寧に録音して、それをメンバーに聞かせて、要望を聞いて、それに応え、さらにティアックの4トラに丁寧にピンポンを重ねていく作業。さすがは音楽工学学科の先輩というより、うーさんはシンセサイザーや多重録音の世界ではかなりの著名人だったのです(ローランドシンセサイザーコンテストで2回グランプリ獲っているのですよ)

レコーディングに力を貸してくれたみなさん。左から藤本さん、勝木くん、ゴンゾ、わし、あゆもん、くまさん

この体験も僕の音楽制作人生において大事件でした。谷くんと一緒にエンゼルアワーという「創意工夫」のバンドを何の偏見もなしに、むしろ谷くんのアプローチを「面白い」と思ってくれたうーさん。音作りということを本当に勉強させられた夏でした。レコーディングには同じマンションの勝木くん(彼はこのあとライブでリズムボックスの担当になる)や、2年後にエンゼルアワーに参加するゴンゾくん(彼とは現在『2019年』も一緒に音楽やっているメンバーです)。他にも現在は著名な現代芸術作家の方も遊びにくるついでに録音に参加してくれたりと、とても刺激的な夏だったのです。

※この当時の音源はどこかに残っているはずなのですが、見つかり次第アップしますね。

この録音で完成した曲は、確か9曲。ねじまき天使/エンゼルアワー/ネクタイ時間/ビリー(boy)ピリグリム/自動人形を思ふ夜/フラワーガーデン/ティラノザウルスブギー/エンゼル・カミング・アイム・ヒア/中国散歩。タイトルだけ書き綴っても、谷くんワールドが炸裂しているでしょ。

ヴァージンVSとの出会い

同じ夏、谷くんが大ファンだった「あがた森魚」さんとコンタクトが取れ(谷くんはあがたさんと文通していたみたいです)。あがたさんの新しいバンドの練習場所として、谷くんの農家の廃屋スタジオやってきました。

この時のバンドが、あがたさんがA児と名乗り、ニューウェーブに転向した「ヴァージンVS」なのです。

くじいた足を引っ張って伸ばしている谷くん。なんか意味不明(笑)

その練習の最中に、あがたさんは足をくじいららしく、練習後に南河内郡の銭湯に浸かって帰ってきました(その直後のあがたさんのライブでは松葉杖をついてやっていました)

当時、あがた森魚さんが新しくバンドをスタートさせたのが「ヴァージンVS」というバンドで、これまでの「赤色エレジー」のカケラもない、ポップでキッチュなニューウェーブバンド。僕たちも京都の拾得というライブハウスまで足を運びすっかりファンになっていました。

初のライブハウス出演

そして夏の終わりに、谷くんのもとにあがたさんから連絡がありました。なんと、内容は「9月のヴァージンVSのライブで僕たちの前座をしませんか」というもの。もちろん断る理由はなく、メンバー一同大騒ぎ。

しかも、そのライブハウスは渋谷の「屋根裏」。2019年現在はもうありませんけど、RCサクセションやBOOWYが本拠地にしていた伝説のライブハウス。

さすがに僕たちもビビりました。というかチビリそうになりました。これまで大学の新歓コンパでした演奏したことがない僕たちにとって、最初のライブハウスが渋谷の屋根裏という、いきなり大きなビッグステージ。そこで対策を考え、新歓コンパで一曲だけギターを弾いてくれた「コンチくん」をメンバーに加え、レコーディングでリズムボックを操作してくれた勝木くん(誰)にライブメンバーの要請をしました。

ふたりとも二つ返事でOK。勝木くんはくまさんの車だけでは東京に行けなかったので、車を出してくれ、2台の車にメンバーと機材を詰め込んで僕たちは東京を目指しました。

なんと単独ライブをクロコダイルで

車を走らせ東京に到着。到着して機材をライブハウスに運び込み、ヴァージンVSの前座。その時の記憶は一切ありません(笑)。しかも写真の一枚も残っていないという…笑

そしてライブが終わり、打ち上げ(…なのかライブハウスだったのか)で、あがた森魚さんが「君たちいつまで東京にいるの? せっかくだから東京で演奏していきなよ、時間があるなら」…とおっしゃってくれて、なんと翌日に原宿のクロコダイルというライブハウスをブッキングしてくれたのです。

クロコダイルといえば、さらに有名なライブハウス。きっと僕たちが出演する日は空いていたんでしょう(だからノーギャラでしたが)、それでもそこに出れるだけの幸せ。半年前には何の楽器も使えないメンバーが組んだバンドなのに。

当日は、あがたさんもゲストで参加してくれてヴァージンVSの「ロンリーローラー」と「エアプレイン」、日本少年に収録されている「冷たく冷やして」をで参加してくださいました。僕たちもこの曲を演奏するのは初めてなので、屋根裏の翌日、三軒茶屋あたりのスタジオで6時間くらい練習したくらいです。でも、ほぼほぼぶっつけ本番。

なんだかすごかった東京遠征。初のレコーディングから、ライブまで僕にとっては刺激的なことばかりで、僕に本気で音楽作りをしていきたいと思ったものです(ただし自分で曲を作り始めるのは1年後ですがw)

ライブ終了後、エンゼルアワーとヴァージンVSで記念撮影。ほぼ全員がタバコを手にしているのが時代を感じますな

つづく


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