2019年逝ってしまったひとたち
今年も多くの残念な人たちが逝ってしまわれました。特に僕にとっては青春の思い出であるドラマ「前略おふくろ様 2」に出演されていた、サブちゃん、ヒデさん、おかみさんが逝ってしまったのはとても残念。
とりわけ自分の中では、小学校・中学校・高校生のヒーロー、ショーケンが3月26日に逝ってしまわれたのは、とても残念。小学校時代はテンプターズ、中学時代は『太陽にほえろ』のマカロニと『傷だらけの天使』の小暮修。そして高校でみんな熱中したのが『前略おふくろ様』のサブちゃんです。
僕は『太陽にほえろ』でマカロニが全力疾走するオープニングが好きだと熱く語ると「カンジがショーケン好きなら、あたしも好きになっちゃおう」と言ってくれた。でも、もうすぐマカロニは通り魔に襲われて犬死にして、さらに萩原健一自身も死んじゃうんだよ。と教えてあげたかったけど我慢した。
小説:遠い未来の昔の記憶:森川眞行 より
一本抜き取り火をつける。ショートホープを咥えマッチを擦って火を付けるのは、高校時代に学校をさぼって喫茶店でタバコを吸っているときに散々やってきた。仲間はみんな『傷だらけの天使』の小暮修のように、タバコを前歯で挟み「バシュッ」と音を立ててマッチを擦り、ぐーっと一気に煙を吸い込むのを真似ていた。
小説:遠い未来の昔の記憶:森川眞行 より
特に萩原健一は、僕らの世代にとってファンションリーダーでもあり、マカロニの頃のロングヘア、傷天の菊池武夫、そして前略のマフラーの結び方は「サブちゃん巻き」と言って、みんな真似したものです。
八千草薫のおかみさんも可愛かった
前略おふくろ様は、シーズン1とシーズン2があり、いずれも「深川」が舞台。ジーズン1では「分田上」という料亭でしたが、シーズン2では「川波」という料亭に舞台を移し、出演者はほぼそのままで、川波のおかみさんは八千草薫が演じます(そして娘は木之内みどり)。
その八千草薫さんも10月に膵臓がんで88歳でお亡くなりになりました。とても残念。合掌。
ドラマでは、シーズン1の、しっかり者のおかみさん「丘みつ子」さんとは真逆の、天然のすっとこどっこいな女性で(笑)。娘役の木之内みどりと「女」の領域で意地になるが可愛かったです。
そして、木之内みどりさんも、小林麻美さんと並んで僕にとっては高校時代のアイドルで、彼女がグラビアで出ていた「GORO」は2冊書いました。
さよなら梅宮辰夫さん
そしてとどめは、12月12日に逝かれた梅宮達夫さん。梅宮達夫といえば、仁義なきな戦いが有名ですが、僕はそれ以前の「不良番長」シリーズや、ポルノの帝王、トルコの帝王などのエロいキャラも大好き。
梅宮さんは、それまでのプレイボーイ役、ヤクザ役のあと病気されて暫く第一線を退かれていたそうですが、この前略で「元ヤクザの板前」で復活。これまでと違い「渋い」演技はここから出発したそうです。
板前として寡黙に料理に向かい合う姿は、実際にプライベートでも料理好きだったこともあり、ハマり役だったそうです(本人も気に入っていたらしい)。さらにこのドラマの出演が決まった萩原健一も、3ヵ月料理の修行をしたそうで、ドラマのクランクインでは、周囲が驚くような包丁さばきや、料理の手際がよかったそうです。さすがショーケン。
なので、このドラマ以降、梅宮辰夫とショーケンはプライベートでも仲良しだったそうで、そんなエピソードは前略ファンとしては嬉しいものです。
とにかく全てが懐かしい、素晴らしいドラマ
他にも、サブちゃんの周囲のカスミちゃん(坂口良子)、半妻さん(室田日出男)、利夫さん(川谷拓三)、ヒロシ(大口ヒロシ)、修さん(志賀勝)もお亡くなりになって寂しい限り。でもこのドラマを見れば、みなさん生き生きと昭和を行きていて嬉しくなります。
もちろん、ご存命でいまも活躍されている、恐怖の海ちゃん(桃井かおり)、サブちゃんの彼女・タヌ子(風吹ジュン)も、昭和の僕たちの青春を応援してくれていた女優さんですよね。
このドラマではシーズン1,2併せて女優さんたちが本当に魅力的。だから故にラストシーンのサブちゃんがカスミちゃんから貰った手紙が物悲しく、そしてこのドラマから40年経った僕たちに勇気をくれます。
昨日荷物を整理していたら、あなたから貰った古い手紙が出てきました。その中には、こんな一節がありました。
俺はいま、歩きながら泣いています。俺はさえこ叔母さんや岡野の叔父さんの青春の日々を知りません。同時に自分のおふくろの若く、可愛く、恋をした…そうした時代を考えもしなかった。でも、おふくろにもそれはあったはずで…。
カスミちゃん、俺は今、山形であなたのことを思い、ひとりで涙を流しています。例えば、俺とカスミちゃんが、万一一緒になったとする。
一緒になって蔵王に住んだとする。ふたりの間に何人か子ができる。子供達は大きくなり一人前になる。彼らは街へ出て働き始める。
俺たちは年を取り、俺が死んでカスミちゃんが残る。カスミちゃんがひとりで蔵王に残る。そのとき、子供達はカスミちゃんのことを、ただの皺だらけのおふくろとしか見ない。
昔、分田上で働いていた頃の、二十歳すぎたばかりのカスミちゃんを知らない。そんな母親を知ろうともしない。昔、母親が若かったこと。母親にも青春があったということ。
サブちゃん、この手紙をあたしはどっかに大切にしまっておこうと思います。そして将来、あたしの子にそっと見せて自慢してやる。
見なさい、母さんにも、こういう風に輝くばかりの青春があったのよ。
サブに宛てたカスミちゃんの手紙
そうだ、カスミちゃん。おれも取っとく。あんたのこの手紙を俺も大事に。
そして俺がいつか老け込んで、入れ歯なんかピチャピチャ洗うようになったとき、俺は俺の子や孫たちに、この手紙を見せて言ってやる。
俺にも、こういう青春があったんだ。
そして海ちゃんや半妻さんや利夫さんが、もしもいつの日か老け込んで、子供達からやっかいもの扱いされたりしたら、俺は飛んで行って、その子供達に、この手紙を見せて言ってやる。
「てめえらふざけんな!俺たちにだって、こういうギラギラした若い日があったんだ。毎日が憂鬱で、それでいて張りがあり、それらの細々した小さな事件を故郷(くに)のおふくろに書き送った日々…」
前略…。
サブの最後のセリフ
いやー、本当に素晴らしいドラマでした。あれから40年。僕も還暦になり、すっかりおじいちゃんで孫がいる今、この先もまだギラギラと、それでいてのんびりした日々を過ごしたいものです。