癌に侵された青年の映画
2011年のアメリカ映画。主演はジョゼフ・ゴードン=レヴィット。ここんとこ、ジョゼフ・ゴードンが出演している映画として、キルショット、メタルヘッド、LOOPER/ルーパー を観てきたが、どうも顔を覚えられない。それぞれに、癖のある役ばかりだが、今回の映画はジビアだけどコメディタッチということもありノーマルなジョゼフ・ゴードンなので、ようやく覚えたかも知れない。
真面目な青年(アダム)が、生存率50%のガンにかかり、主人公と周囲を描いたドラマ。本来なら重苦しいテーマなんだけど、それを明るくも淡々と描いている。特に秀逸なのは、主人公の同僚の友人カイル (セス・ローゲン)。
周囲がガンにかかった主人公を気遣うなか、彼だけが、以前と変わらず、女とセックスすることばかり考えていて主人公のガンですら、ナンパのネタにしてしまうという、とんでもない奴。
でも、本当に彼のことを心配しているのは、カイルなんだ…ということをうまく演出してて、手術当日のセス・ローゲンの演技は、ぐっと来るものがある。
あと、音楽もよい。オープニングからエンディングまで、あまり知っている曲はなかったが、いいタイミングで音楽がインサートされてくる。その中で、唯一僕が知っていたのがビージーズのTo Love Somebody。アダムが、初めて癌病棟で治療する際、ガン仲間の老人達との絡みで流れる。
僕がはじめて、この曲を聞いたのは、「小さな恋のメロディ」という映画。運動会で、主人公のダニーが、メロディを思い浮かべてレースに参加し、必死に走って一位になるというシーン。そこにTo Love Somebodyが流れる。
小さな恋のメロディでは、若々しさと初恋の気持ちを、未来への賛歌として使われていたこの曲が、この映画では、死を迎える人々が淡々と生きているシーンに使われている。このコントラストは、監督が意図的にやったのかどうかは知らないけどかなり印象的だった。
僕の両親は、ふたりともガンによって逝ってしまった。だから、手術の後のシーンなんかは本当にうるっときてしまう。
この映画ではかなりライトに描かれているが(それが合衆国でのガンへのスタイルなのかもしれないが)、ガンにかかった患者とその家族、友人が抱える重たさは、実際に体験したことがないとわからない重さだ。とりわけ日本の場合は、友人はそこにあまり関与せず、家族の中で重くのしかかる。
全体に愛に満ち溢れている映画。ラストシーンも、すごくいい感じで終わっていく。