誰も知らない

実際の事件を題材にした物語

是枝裕和監督の2004年の日本映画。実際の事件を題材にした物語。実際にあった事件とは、1988年の「巣鴨 子供置き去り事件」。

最初から最後まで、陰鬱で辛い映画である。

母親は、子供たちをアパートから出ないように支持する。むろん学校にも行かせない。そして途中から子供を置いて消える。4人の兄弟が、学校も行かず、外にも出ないでアパートで暮らす。

母親がいなくても…それでも子供たちは生きていかなくてはならない。時々送金される金では生活ができず、電気や水道が止められる。それでも子供たちは生きていかなくてはならない。

その4人の子供は全員父親が違うのに、固い絆で結ばれている。いや「絆」なんて意識もない。ただ一緒に兄弟として生活して、助け合っている。…いや、助け合うなんて意識もないのだろう…。実際になんども兄妹喧嘩もしているし…うまくいえない。

公園の水道から水を汲みペットボトルに入れてアパートに運ぶ。公園の水で衣服を洗って公園の鉄棒に干す。コンビニの廃棄食糧を貰う。ベランダに食べれそうな菜園を作って植物に水をやる。学校に行かずに4人だけで生活する。そうやって子供たちは生きていく。

悲惨な状況を淡々と見せられる

画面から異臭がしてきそうなゴミだらけの部屋、ちびたクレヨン、ベランダの土。悲惨な状況を映像は次々に切り取るが、そこに出てくる子供たちは、そういった悲惨な状況を普通に受け入れている。むしろ無邪気に笑っているシーンの方が多かったように思う。

こんなひどいことをした蒸発してしまう母親(YOU)の描写も、子供好きのお母さんを演じているシーンが多く、そうした人間の描き方と、現実で起こっている悲惨な出来事のコントラストがすごい。子供達も、自分たちを捨てた母親に憎しみを持っていない。ただただお母さんと一緒に生活できないことが寂しいだけだ。もちろん怒りや憎しみを持つような年齢ではないのかもしれないが…。

そんな中で、主人公の長男(柳楽優弥)だけが痛々しい。弟や妹の保護者代わりに、食糧を集め、たくましく生きていく。

いや、たくましく生きていく…なんていう気概はないのかもしれない。目の前で起きていることに対して、やれることをする。そういう意味で、ラストのカットは希望を描いているのではなく、明日もこうやって生きていく…というシンプルなたくましさなんだと思った。

そして見ている側は、何もできる、ひたすら切なくて、ひたすら悲しい。

いろんな意味で、子供は強いと思った。よくできた映画で、色々なことを考えさせられたがもう一度見たいとは思わない。辛いから。

ちなみに、この映画で柳楽優弥は、カンヌ映画祭で史上最年少の主演男優賞を受賞した。


  • 監督/脚本/製作:是枝裕和
  • 音楽:ゴンチチ
  • 出演者:柳楽優弥/北浦愛/YOU
  • 公開日:2004年8月7日
  • 第57回カンヌ国際映画祭・最優秀主演男優賞
  • ウィキペディアで見る
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