2009年の日本映画
2009年なので、まだスマートフォンが一般普及していない頃の映画。脚本は
宮藤官九郎。メインキャストは阿部サダヲ、竹内結子、瑛太。
おおまかな「あらすじ」では、人間のクズのようは親父が、祐太(阿部サダヲ)という子供を持つ。クズの父親は次男祐介(瑛太)の妊娠中に、祐太を連れて嫁から離れる。
クズ父は祐太を連れて、昔のツテで「デリカの山ちゃん」というハムカツ屋に世話になるが、クズ父は店の金を持って裕太を置いて失踪。裕太は一生懸命に働き、主人に気に入られ2代目デリカの山ちゃんを引き継ぐ。
一方、別れた弟の祐介(瑛太)は、苦労の末に知り合った、兄と慕う相方と漫才コンビを結成し有名になる。
ある日、テレビの撮影で「デリカの山ちゃん」をタレントになった弟・祐介が取材するが、双方にこの時点で兄弟であることは知らない(あたりまえ)。
そんなとこに、仙台の主人の娘、家出をしていた徹子(竹内結子)が戻ってくる。
ハムカツ屋の娘で、食べることだけが趣味だったデブの徹子は「いい女」になって戻ってくる。そして徹子には2人の子供が居た。
とにかく阿部サダヲすごい
とまあ、あらすじだけを書いても面白い映画であることが伝わるでしょ。そしてそれ以上に役者陣がすごい。特に主役の阿部サダヲは、終始キレキレで面白いです。
それに絡む竹内結子も最高。あのデブがこんなにいい女になっていて、今でも2代目山ちゃんが好き…とか、ありえないくらいに最高。商店街あげての結婚式とか、もう宮藤官九郎ならでは的な感じがして笑いっぱなし。
あー、あと認知症になったお母さん(いしだあゆみ)も最高です。
子供の頃に親に捨てられた生き別れの兄弟…というだけで、本来なら「お涙頂戴」的な安っぽいドラマになりがちなのが、阿部サダヲを中心にしたキレッキレの爆笑と、スピード感ある演出が凄まじく、結果的に爆笑の果てに悲しさと切なさがやってくるという、二重構造。
ついタイトルで連想してしまうのが、昔のテレビドラマ「泣いてたまるか」なんですよね。渥美清主演の人情ドラマで、小学校の頃に観て「大人になるって大変だなあ」と思ったものです。
どっちかというと、あまり幸福でない人生を歩んでいる主人公(渥美清)と、そこに起きる悲しい出来事のドラマなんですが、演じているのがコメディアンとしての渥美清なので、心底泣かすような演出ではないのだけど、むしろそれが心に痛いのですね。そんなことを阿部サダヲを観ていて、思い出しました。
とくに後半の深夜の公園での義娘とのやりとり(公園のブランコのシーン)は、普通に王道のドリフのようなギャグで、こうなることがわかっていてもゲラゲラ笑ってしまった。
ここで義父としての2代目山ちゃんの心情と、それをわかっていて気にする、ちょっと気の強い娘とのやりとりは、ラストの沖縄のシーンで涙を誘う布石でもあります。
阿部サダヲと瑛太
そして生き別れの弟・祐介(瑛太)もいい感じです。阿部サダヲ、瑛太、竹内結子…ってなんか他にもあったなあ…って調べてみたら、以前に観た「殿、利息でござる!」に出てますよね。この3人、いいバランスだと思います。
ラストの沖縄のシーン。これまで盛り上がってきているので、どんな大円団になるのかが楽しみだったのですが、まあ、結果としては「そこそこ」という感じ。それは決してディスっているのではなくて、ここにたどり着くまでの展開が面白すぎた。
「少年メリケンサック」でもそうだったんだけど、宮藤官九郎の脚本って、終始面白すぎて、ラストに期待をかけすぎてしまう。そして自分自身が抱いた期待に対して、100%以上の感情移入ができないと泣けないのですよね。それは自分で小説を書いてみて、物語を作ってみてすごく感じたことです。
いやー、でも面白かった。おそるべし阿部サダヲ(笑)