大学2年生の夏が蘇るアルバム
「ロックアルバム31」の12枚目。なんとボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズです。レゲエです。…と書くと以外に思われる方も多いでしょう。「え!森川さんレゲエ聞くんですか? レゲエ好きなんですか?」って。
答えは「No!」であります。レゲエって好きじゃないし、むしろ嫌い。というか大嫌いなんですよ(レゲエ好きの皆さんすみません)。じゃあ、どうしてレゲエが嫌いなのかと言えば、まずは「みんな同じに聞こえてくる」という基本があり、それ以上に演奏しているミュージシャンが暑苦しい。ドレッドヘアは臭そうだし、ファッションも僕の好みじゃないんです。さらに言えば、レゲエ好きのファンの皆さんが大嫌い。なぜなら、その多くはマリファナ大好きのラリ公が多いことも挙げられます。
だがしかし、このボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズの「エクソダス」だけは特別に大好きなんです。このアルバムを購入したのは大学2年生の春頃だったような記憶があります。なぜ、このアルバムを買ったのか理由は覚えていないのですが、大学2年から僕は、自宅を離れて、大学のある大阪府南河内郡の太子町という街で、アパート暮らしを始めた頃でした。
そのアパートは二階建てで、二階の一番奥の部屋。隣の二軒には大学生(当時4年生)が住んでいて、同じ美術学科の先輩でした。はじめての「一人暮らし」は、いろいろな不自由もありますが、とても楽しかった。部屋にはベッドと本とステレオとレコードしかなかった。今から40年も前なので当然、スマホもパソコンもありません。それどころかテレビもなかった。
あるのは、多くの書籍とレコードだけ。それでも僕はすごく自由を満喫していたのです。その二人の先輩も同じような環境で、みんな夜になると、誰かの部屋に集まって、レコードを聴きながら酒を飲んでました。
その時に聞いたボブ・マーリーのエクソダスが、すごく心に刺さって、一気にファンになってしまったのです。…と言っても、レゲエのファンになったのでもなく、ボブ・マーリーのファンになったのでもない。エクソダスというアルバムのファンになったのです。当時聴いていた音楽は、ニューウェーブやパンクばかりでしたが、そこで聴いたこのアルバムは、今聞いても、大学2年のアパートのことをよく思い出します。
1曲めの「Natural Mystic」からラストの「One Love/People Get Ready」まで、通して聞くと、汗だくで学校の実習から帰ってきて、狭いキッチンで玉ねぎとベーコンのスープを作り、銭湯で汗を流し、晩飯を食ってから、先輩の部屋で「サントリーホワイト」に氷をぎっしり入れたロックを飲みながら、先輩が聞いていたジャズや、僕が持ってきたニューウェーブ。そして、このアルバムを聞いていた夜が思い浮かびます。
ボブ・マーリーじゃなくて、このアルバムが好き
レゲエのファンというか、ボブ・マーリーの信者の方と話をすると、彼の曲について熱く語られることが多く、実際にボブが名曲を作ったことは知っています。Concrete Jungle、Get Up, Stand Up、No Woman, No Cry…どれも名曲だと思うし、嫌いじゃないです。
でも、僕は動いているボブ・マーリーの姿は暑苦しい。コーラスのおばちゃん3人組は好きだけど、彼のタコ踊りを見ていると、全く好きになれない。
ボブ・マーリーの音楽性も才能も全く否定しませんが、そんなことは僕にとってはどうでもよくって、21歳の夏に、あのアパートでサントリーホワイトを飲みながら、これからの人生や芸術について考えていた、あの頃が好きなんです。
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