同じ月を見ている

土田世紀の漫画が原作

最近見ている日本映画は、漫画が原作のものが多いような気がする。それだけオリジナルの脚本は、ハリウッドとは異なって層が薄いということなのでしょうかね。

舞台はおそらく軽井沢。鉄矢(窪塚洋介)、ドンちゃん(エディソン・チャン)という仲良しの男の子が、病弱な少女エミ(黒木メイサ)と出会うところから物語はスタート。

原作では、エミの父親は外人の大金持ちだったけど、映画版ではちょっとリッチだけども普通の日本人。ドンちゃんはちょっと頭の弱いいじめられっ子。だけど人が考えていることを絵にする不思議な能力を持っている。

このドンちゃんがすごくいいんです。なんというか心が綺麗。人を疑ったり、憎しみを持つことを知らない。けど不器用なので色々と虐められたり、騙されたりする。

貧乏で不器用なドンちゃんに対して、鉄矢(窪塚洋介)は、小学校の集団の中で、みんなについていくためにドンを虐めたりする卑怯なやつ。卑怯というより、それが日本の社会ではあたりまえなのかな。だからそれで普通。鉄矢は僕たち自身なのかもしれません。

そんな鉄矢は、エミの病気を直すために医者になることを決意するが、純粋なドンを見て嫉妬心を感じる。さらに自己嫌悪になり自暴自棄に。そしてかつてドンちゃんとふたりで遊んでいた秘密基地を燃やしてしまい、その山火事でエミの家が燃え、父親が焼け死んでしまう。

おそらくドンちゃんは、鉄矢が犯人と知っていたのだろうけど、鉄矢が捕まることでエミの病気を治す人がいなくなる…と思ったのか、警察の取り調べで反抗を認めて刑務所に送られることに。

ドンの脱獄から物語がはじまる

そして、ドンが刑務所を脱走。もちろん警察は鉄矢やエミのもとに聞き込みにやってくる。なぜドンが刑務所を脱走したのか。それは鉄矢とエミに絵を届けるためなのである。

そして、脱獄したドンちゃんは、なかなか絵を届けることができない。その間のエピソードで登場する、半グレのチンピラ金子がよい。演じているのは「れいわ新選組」党首の山本太郎。

山本太郎って「バトル・ロワイヤル」でも、コテコテの大阪弁の乱暴者という役の印象が強くて、ぶっちゃけ大根役者なんだと思うのですが、だがそれがいい。僕はギラギラした演技をする山本太郎は好きです。

その金子も、ドンと出会うことで人間が大きく変わっていく。きっとドンの純粋さに心が動かされたのでしょう。分かりやすい展開がむしろ素敵。だがしかし、そんな金子も悲しい結末が待っている。

そしてドンは、逃亡の旅の間に日本画の師匠の仕事場である寺に匿ってもらい、そこですごい大作を仕上げる。

ラストの山火事は見たくなかった

自分の心の闇を恥じた鉄矢は、エミを車に乗せてドンを探しにいく。そして再び山火事が起きる。この段階できっと悲しい結末が待っているだろうな…と思い、山火事のシーンは見たくなかった。

そうそう、この映画では火事のシーンがふたつありますが、それを見ていて以前に観た「ナミヤ雑貨店の奇蹟」を思い出したのは僕だけでしょうか。

窪塚洋介は頑張ったと思う

この映画は当初、転落事故に遭遇した窪塚洋介の復帰作らしく、本来はドンの役立ったそうです。むろんこの映画はドンちゃんが素敵な役所には違いないし、役者としても、やりがいがあったのでしょうが、窪塚洋介はあえて鉄矢の役を希望したそうです。

この映画での鉄矢のポジションは、観ている人に共感を与えない役所なのですが、あえてそこを選んだのは素晴らしいチャレンジだと思います。

それはラストの鉄矢の叫び。観ている人の胸が張り裂けそうになるシーンです。

物語の展開がショッキングなので、かなり泣きました(笑)。でも観てよかった。ただしエンディングはあれでよかったのかは、僕的には謎。久保田利伸は嫌いじゃないけど、日本語の歌が流れるエンディングって、それまでの物語を台無しにする可能性がありますから。


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